奪う男




 「サンジ、まだ客いねぇのに朝っぱらから何作ってんだ?」

 間抜けな質問に俺は眉を顰めた。
 クソジジイの部屋に砲弾をぶち込んできた自称海賊のその男は、一年間の雑用を命じられ、今日でその三日目だ。

 「ああ?まかない作ってんだよ」
 「?巻かない…?何を?」
 「バーカ、まかないっつーのはコックが食う食事だ」
 「コックも飯食うのか!」
 「当たり前だ!」

 雑用の無知さ加減には頭が痛くなる。
 こいつの仲間たちは、何故こいつと共にグランドラインまで行こうとしているのか。
 馬鹿げてるとしか思えねぇ。


 雑用はさっきから感心した眼差しで俺の手つきを見ている。

 「すげーな、コックの手って」
 「まぁな…長年の修行の賜物ってやつだ」

 俺からしてみれば、触れた皿全て割っちまうこいつの手の方が信じらんねぇんだが。
 そんなことを考えていたら、ひょい、と包丁を持っていた手を持ち上げられた。

 「おい、危ねーだろうが!」

 その言葉も耳に入っていないかのような表情で、雑用は俺の手を間近で見つめる。
 そして俺の手から包丁を取り上げると、何を考えてるのか知らねぇが、いきなり指先に噛み付いてきた。

 「…!!何しやがる…!」
 「ん、美味そうだったから」
 「美味いのは俺の手じゃなくて、料理……んんっ」

 何が起こったのかわからなかった。
 近付いてきた雑用の顔、唇は塞がれて息ができない。
 ぬるっとした舌の感触で漸く気付いた。
 こいつ、キス…しやがった。


 俺が呆然としていると、無抵抗だと勘違いしたのか再び口付けようと雑用の顔が近付く。
 慌てて蹴り飛ばそうとしたが、ここで暴れたらせっかく作ったまかないが台無しだ。
 怯んだ隙に、もう一度触れる唇、隙間から入り込む舌。

 「っふざけんな!俺は男には興味ねぇんだ!」

 何とか雑用を引き剥がし、俺は声を荒げた。
 だけど雑用は全く意に介さぬ様子で、にやりと口角を上げ囁いた。


 「俺はお前に興味がある」



 やべぇ、こいつとこのまま二人でいたらどうにかなっちまいそうだ。
 危機感を覚えた俺は雑用に皆を起こすよう命じ、厨房から追い出した。

 一人残された厨房で、一気に力の抜けた俺は床にへたり込んだ。
 あいつ、俺がよく使う口説き文句、何で知ってんだ…?
 「君に興味があるんだ」なんて最近は言ってねぇから、あいつが知ってるはずはないのに。

 会心の決め台詞と唇を同時に奪われたショックで、俺は暫くその場から立ち上がれなかった。




 俺の居場所はこの店しかねぇんだ。
 どうせお前は雑用の期間を終えたらとっとと旅立って行っちまうんだろ?
 気まぐれで俺を誘ってるんなら、他をあたってくれ。

 まさか、俺そのものまで奪っていく気じゃねぇよな?






祝!THE 2ND LOG "SANJI"発売!
ということで初心に帰ってバラティエです。
んもーエロすぎるよこいつら!
公式でいちゃこきすぎ!(グッジョブ!)

一人バラティエ祭、続行中…。
もう1本くらい書きたいなー。

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